企業文化とは? 4つのタイプと自社に合った文化の選び方
企業文化とは?
「企業文化」という言葉はあちこちで見聞きされますが、その定義は簡単ではなく、正しく理解されているとは限りません。
一般的に、企業文化は組織全体としての環境を指します。
Inc. magazineは次のように、よく使われる定義を紹介しています。
「企業文化とは、組織メンバーが共有する価値観、態度、基準、信念のことであり、組織の本質を定義づけるものです。企業文化は、組織の目標、戦略、構造、そして労働者、顧客、投資家、さらには地域社会に対するアプローチに根付いています。」
— 企業文化の重要性
すべての企業は成功するための独自のビジョンを持っています。
経営者や創業者はそのビジョンを達成するための目標を設定します。そして、従業員は多様なスキルと能力をこのプロセスにもたらします。
これらの要素が組み合わさって、最高の企業文化が形成されます。企業文化は、会社がどのようにビジネスを行い、顧客と接するかを決める指針となります。
理想的な企業文化は、従業員同士をつなげ、組織全体を前進させ、企業目標の達成を後押しします。
企業文化が良いと次のようなメリットがあります。
1. 従業員エンゲージメントの向上
健全な企業文化は、従業員の貢献が評価されていると感じさせてくれます。
エンゲージメントの高い従業員は生産性が高く、会社の利益に直接的に貢献します。
2. 離職率の低下
職場環境が悪かったり、企業文化が自分の価値観に合わないと感じると、従業員は別の仕事を探し始めます。
良い企業文化はインクルーシブ(包括的)であり、一人ひとりの従業員の価値と貢献を認めています。
3. 優秀な人材の採用
求職者は、特定の組織で働くかどうか決める際に、その企業文化も評価します。
企業文化がポジティブであれば、優秀な人材を引き付け、働く意欲を高めることができます。
企業文化の4つのタイプ
以下は、4つの主要なタイプの企業文化です。それぞれ詳しく見ていきますが、どのタイプが良いか、優れているかは断言出来ません。
企業文化には多くの変数と違いがあり、各社が自社にとって何が最善かを判断する必要があります。
1. クラン型文化
クラン型文化、または協調型文化と呼ばれるこのタイプは、チームワークを重視しています。
この文化では、人間関係、参画、そして会社の士気が最優先されます。管理者は、文脈や支援なしに指示を出したり、ミスをした人を懲罰する権威主義的な「ボス」ではなく、従業員にとっての助言者やガイドとして見られます。
クラン型文化は、経営層と従業員間の障壁を最小限に抑えることを目指しています。また、変化を受け入れ、行動を起こすことに焦点を当てた柔軟性が高いことも特徴です。
クラン型文化の利点
- チームが一緒に働くことを楽しむ
- チームメンバー間のコミュニケーションがオープンで効果的
- 従業員のエンゲージメントが高い可能性がある
- 市場成長の可能性が高い
クラン型文化の弱点
- 企業が成長するにつれて維持するのが難しい
- 水平型のリーダーシップ構造のため、キャリアパスが不明確になる可能性がある
- 過度の協調性により生産性が犠牲になる場合がある
- 他人の気持ちに配慮しすぎるあまり、リーダーシップを取ったり、厳しい決断を下すことができない場合がある
2. アドホクラシー型文化
アドホクラシー型文化は、主に革新とリスクテイクに焦点を当てています。
多くの成功したスタートアップ企業はこのタイプの企業文化を持っていると言われています。アドホクラシー型文化は、職場内に起業家精神あふれる環境を作り出し、従業員がリスクを取ることを奨励します。
より保守的な職場で型破りだと考えられるようなアイデアも、アドホクラシー型文化では積極的に育まれ、追求されます。
このような企業は、野心的な目標とビジョンを持っています。常に「次のビッグシング」を探しており、リスクを取る準備が必要です。
アドホクラシー型文化の利点
- ハイリスク・ハイリターン。成長とブレークスルー(飛躍)の可能性が高い
- 従業員は創造性を発揮し、新しいアイデアを開発するよう動機づけられる
- 新しいアイデアを提案しても支援してもらえる
- プロフェッショナル・デベロップメント(キャリア開発)の機会への投資意欲が高い
アドホクラシー型文化の弱点
- 新しい取り組みの数が多いことによる、安定性の欠如
- 新規事業が成功せず、会社に損害を与えるリスク
- 後輩社員は、積極的に行動し、迅速に決断する必要性から、威圧感を感じる場合がある
- 新しいアイデアを常に生み出さなければならないというプレッシャーから、従業員同士が競争関係になる場合がある
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3. マーケット型文化
マーケット型文化では、利益が最優先事項です。
すべての活動は、会社の収益性を念頭に置いて評価されます。このタイプの企業文化を持つ組織は、主に結果に焦点を当てています。
マーケット型文化では、目標達成やノルマ達成に関する言葉がよく使われます。競争心旺盛で「勝ちたい」という気持ちを持つ人を惹きつけます。
マーケット型文化では、リーダーは要求が高く、従業員はプレッシャーの高い環境の中で高いパフォーマンスを発揮することを期待されます。
マーケット型文化の利点
- 従業員は仕事に熱心
- 競争的な環境は、すべての従業員に、努力し、会社の目標を達成するよう促す
- 組織は収益性に焦点を当てている。これは従業員が共感できる目標である
- マーケット型文化を持つ企業は多くの場合、成功し、利益を上げている
マーケット型文化の弱点
- すべての意思決定が数字に結びついているため、従業員が仕事に集中しにくい
- 競争が常に存在するため、職場環境が悪化する可能性がある
- 常に成果を出すことを求められるため、従業員がストレスを感じる
- 常に上を目指し、結果を出すことを求められるため、従業員が燃え尽きてしまう可能性がある
4. ヒエラルキー型文化
ヒエラルキー型文化は、伝統的な企業構造に従い、明確な指揮系統を持つものです。
経営層と従業員の間には、いくつかの管理層が存在します。
このタイプの企業は、服装規定や固定勤務時間など、物事をやり遂げるための決まった方法を持っています。
企業の焦点は、安定性と信頼性にあります。
ヒエラルキー型文化の利点
- 保守的な文化であるため、企業は安定している
- 企業の目標達成のためのプロセスが明確に定義されている
- 従業員は、仕事に行く時に何を期待されているかを正確に知っている
- 期待値と労働条件が予測可能であるため、従業員は安心感を得られる
ヒエラルキー型文化の弱点
- 人よりも手順を重視するため、柔軟性に欠ける文化になる
- 従業員が新しいアイデアを提案することを阻害する可能性がある
- 市場変化への対応が遅れる場合がある
- 個人の目標よりも会社の目標が優先されるため、従業員のエンゲージメントが低くなる
自社に合った企業文化を選ぶ方法
1. 会社の核となる価値観を明確にする
会社の価値観は、オーナーや創業者が、会社の名前が頭に浮かんだ時に真っ先に思い浮かべてほしい言葉の一つです。
これらの言葉は、行動に移され、会社のブランドと結びつけられます。
伝統的な方法で顧客の信頼を得ることに焦点を当てている会社もあれば、新しい市場を開拓することに積極的な会社もあります。
また、全員が次のステップに発言権を持つスタートアップ企業もあります。いずれにしても、いくつかの言葉で会社の価値観を表現することが重要です。
2. 現実的な企業文化の目標を設定する
企業文化の目標は、多様性、包括性、共有価値観に関連するものであるべきです。
オーナーは、なぜ会社を始めたのか、何を達成したいのかを考える必要があります。
企業文化はこれらの考えを反映するものでなければなりません。従業員やその他の人々を刺激するポジティブなメッセージであるべきです。
3. 従業員をプロセスに巻き込む
企業文化は測定したりその効果を追跡するのが難しいものです。それを改善するには、従業員の参加が必要です。
従業員エンゲージメント調査などを活用して、フィードバックを収集しましょう。結果が匿名であることを確認することで、従業員の本音を聞き出すことができます。
オープンな対話を維持し、従業員の企業文化に対する考えを常に把握することが重要です。
4. リーダーが模範となる
リーダーは、企業文化を形作る上で重要な役割を果たします。
リーダーは、企業文化の価値観を体現し、従業員に模範を示す必要があります。
リーダーが価値観を軽視したり、矛盾する行動を取ったりすると、従業員は混乱し、企業文化への信頼を失ってしまいます。
5. 文化を維持し、進化させる
企業文化は、時間をかけて築き上げられるものです。
しかし、一度確立したらそのまま放置してはいけません。
定期的に評価を行い、必要に応じて改善していく必要があります。
また、新しい従業員を採用したり、新しい市場に進出したりするなど、会社の状況に合わせて企業文化を進化させていくことも重要です。