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人的資本経営におけるエンゲージメントの基礎

最終更新日:2025.09.30
人的資本経営におけるエンゲージメントの基礎

人的資本経営とエンゲージメントは、今や企業の成長戦略に欠かせないテーマとして注目されています。人材を「資本」として捉え、持続的に価値を生み出すためには、従業員が仕事に誇りを持ち、主体的に関わる環境づくりが不可欠です。

特に日本ではエンゲージメント水準が国際的に見て低く、改善の余地が大きいことから、人的資本経営の実践を通じた改革が求められています。投資家からの情報開示要求やESG投資の潮流も後押しとなり、エンゲージメントの測定と施策への反映は企業価値向上の鍵を握ります。

本記事では、エンゲージメントの定義や測定方法、開示のあり方から、実際の施策や事例までを解説し、人的資本経営を成功に導く実践的なアプローチを紹介します。

人的資本経営とは?

人的資本経営とは、人材を単なるコストではなく企業の価値を創出する「資本」と位置づけ、積極的に投資していく経営の考え方を指します。従来の年功序列や終身雇用といった仕組みに依存するのではなく、人材の成長や能力開発を通じて中長期的な企業価値の向上を実現することを目的としています。

この潮流は国際的にも広がっており、ISO 30414によって人的資本に関する情報開示の枠組みが整備されています。日本でも2023年から有価証券報告書における人的資本情報の開示が義務化され、企業が人材をどのように活用し、育成しているかを示すことが求められるようになりました。こうした背景から、人的資本経営は単なる経営手法にとどまらず、企業の持続的成長に不可欠な取り組みとして注目を集めています。

エンゲージメントとは?

エンゲージメントとは、従業員が企業や仕事に対して抱く情熱や愛着、そして貢献しようとする意識を表す概念です。特にワーク・エンゲージメントは、しばしばモチベーションと混同されますが、一時的な気分ややる気ではなく、仕事に主体的に関わり続ける持続的な心理的状態を指します。エンゲージメントが高い従業員は、自律的に行動し、成果につながる姿勢を安定的に保ちやすいとされています。

このような状態が広がれば、生産性や創造性の向上、離職率の低下といった効果が期待できますが、逆に低水準のままでは組織全体のパフォーマンスに深刻な悪影響を及ぼす可能性があります。実際に、日本のエンゲージメント水準は世界的にも極めて低いことが報告されています。

ギャラップの「State of the Global Workplace 2023」によれば、日本でエンゲージしている従業員はわずか6%にとどまり、世界平均の23%を大きく下回っています。さらに、この低水準がもたらす生産性損失は年間で86兆円を超えると推計されており、改善の必要性は明らかです。

参考:State of the Global Workplace | Gallup

なぜ今、エンゲージメントが重視されるのか

人的資本経営やエンゲージメントが注目を集める背景には、ESG投資の拡大があります。企業に求められる価値基準が財務指標だけでは不十分となり、人材に関する非財務情報の開示が強く意識されるようになりました。ISO 30414や「人材版伊藤レポート」によって、人的資本を可視化し、透明性を持って開示する流れが制度的にも後押しされています。

投資家にとっては、売上や利益といった短期的な成果だけでなく、「働きがい」や「心理的安全性」といった職場環境が中長期的な企業価値を支える要素として位置づけられています。従業員が安心して力を発揮できる組織ほど、持続的な成長とイノベーション創出につながると認識されているため、エンゲージメントの水準は企業評価において欠かせない指標になりつつあります。

関連記事:従業員エンゲージメントとは?高める重要性や具体的な施策を紹介

エンゲージメントのKPIと測定設計

エンゲージメントを正しく把握するには、まず測定の設計を整理する必要があります。単なるアンケートの集計にとどまらず、量・質・プロセスの三つの側面を組み合わせることで、より立体的に実態を捉えることができます。

測定指標の全体像(量・質・プロセス)

最初の層である「量」では、サーベイの回収率や回答率といった参加状況を確認します。次に「質」では、エンゲージメントスコアや自由記述による意見など、従業員の内面的な実感や態度を把握します。そして「プロセス」では、調査の実施頻度や施策実行の進捗状況を可視化することで、改善活動が継続的に機能しているかを確認できます。

国際/国内フレームの活用

指標設計の際には、国際的なフレームワークを参照することが有効です。ISO 30414は人的資本に関する11の領域を定義しており、「ウェルビーイング」「スキル・ケイパビリティ」「企業文化」「離職率」などを含みます。これらを活用することで、エンゲージメントの測定項目を企業戦略と結びつけやすくなります。

さらに、日本国内での人的資本開示指針や「人材版伊藤レポート」に照らし合わせれば、情報開示項目とエンゲージメント評価をスムーズに連動させることが可能になります。

参考:「人材版伊藤レポート2.0」を取りまとめました | 経済産業省

代表的な測定手法

実務においては、年に一度のエンゲージメントサーベイに加え、四半期や月次で実施するパルス調査を組み合わせる方法が一般的です。これにより、定量的なスコアと質的な意見を継続的に蓄積し、ダッシュボードで可視化することができます。

また、自社の状況に応じて、他社比較を目的とした「パッケージ型」と、自社の特性を反映させた「カスタマイズ型」を使い分けることで、測定の実効性を高めることができます。

関連記事:従業員エンゲージメントがなぜ重要なのか? 20の利点を紹介

人的資本開示とエンゲージメントの扱い方

人的資本経営を実践するうえで、エンゲージメントは社外への情報開示に欠かせない要素となっています。

近年では投資家やステークホルダーが、財務データに加えて「従業員がどの程度働きがいを感じているのか」を重視するようになり、その評価は企業価値の中長期的な成長を占う指標の一つとなっています。

有価証券報告書/統合報告での開示ポイント

有価証券報告書や統合報告書においては、エンゲージメントを「指標」「取組み」「成果」という三つの観点で示すことが求められます。

単なるサーベイ結果の数値公表にとどまらず、どのような施策を実施し、その結果としてどのような改善が見られたかを説明することで、開示の信頼性を高めることができます。監査対応や説明責任の観点からも、根拠のあるデータを提示する姿勢が不可欠です。

開示に適したKPI例と算出ロジック

開示に用いられるKPIとしては、エンゲージメントスコアの経年推移や改善率、サーベイ参加率などが代表的です。

さらに離職率や生産性との相関を示すことで、エンゲージメントが企業成果に直結することを明確に伝えられます。その際、算出のロジックを透明にし、投資家が理解できる形で提示することが重要です。

IR/サステナビリティ部門との連携体制

エンゲージメントの情報開示は人事部門だけで完結するものではなく、IR部門やサステナビリティ部門と連携して体制を構築することが求められます。責任者を明確にし、定例的な会議体を設け、レビューを継続的に行うことで、ガバナンスが強化されます。

こうした仕組みが整えば、社内外に対して一貫性のある説明が可能となり、開示情報の信頼性を高めることにつながります。

関連記事:ワークエンゲージメントとは?意味・効果・具体施策を徹底解説

人的資本経営によってエンゲージメントを高める戦略

エンゲージメントは、調査して数値化するだけでは意味を持ちません。重要なのは、その結果を実際の施策に落とし込み、従業員一人ひとりの働きがいを高めることです。人的資本経営の観点から取り組むべき戦略を三つの柱で整理し、具体的なアクションに落とし込んでいきます。

戦略1:心理的安全性を高めるリーダーシップ

第一に重要なのが、心理的安全性を高めるリーダーシップです。従業員が失敗を恐れずに意見を交わし合える環境が整えば、挑戦する姿勢が広がり、組織の活力は大きく高まります。

そのためには、上司と部下の関係を深める1on1ミーティングや、評価だけにとどまらない建設的なフィードバックが効果的です。

さらに、失敗を責めるのではなく改善のきっかけとして扱う仕組みを導入することで、学び合いの文化が根付きます。

戦略2:双方向コミュニケーション設計

次に欠かせないのが、双方向のコミュニケーションを設計することです。経営層が一方的にメッセージを発信するだけでは、従業員の納得感や共感を得るのは難しくなります。

そこで、タウンホールミーティングや経営陣とのQ&Aセッションを定例化し、従業員が直接声を届けられる場を設けることが効果を発揮します。

また、社内SNSや匿名の意見投稿チャネルを常設すれば、現場からの声が組織全体に共有されやすくなります。

さらに経営陣自らが現場に足を運び、従業員と直接対話する姿勢を見せれば、経営と現場の距離は縮まり、従業員は自らの意見が経営に反映されているという実感を得やすくなります。

戦略3:ウェルビーイングと働きがいの連動

ウェルビーイングと働きがいを連動させる戦略があります。

健康増進プログラムやメンタルヘルス支援は従来、福利厚生の一環として提供されてきましたが、これを従業員の成長や社会貢献と結びつけることで、取り組みの意味合いは大きく変わります。

例えば、チームごとのチャレンジイベントやボランティア活動と組み合わせれば、従業員は自分の行動が企業や社会の価値向上に直結していると感じやすくなります。また、リモートワークやフレックスタイム制といった柔軟な働き方を導入することは、ワークライフバランスの改善と生産性の向上を同時に実現する施策として有効です。

実際にSAPはウェルビーイングを人材戦略の中心に据え、従業員の幸福度を高めることでエンゲージメントを強化し、その成果が業績にも結びついていることを示しています。

関連記事:エンゲージメントマネジメントとは?離職率低下&業績アップにつながる実践法を解説

サーベイ設計と運用PDCA

エンゲージメントの向上を目指すには、現場の実態を的確に把握し、それを改善施策へとつなげていくサイクルを絶えず回し続けることが不可欠です。

そのための基盤となるのがサーベイの設計と運用であり、単なるアンケート実施にとどまらず、データに基づく継続的な改善活動の仕組みづくりが求められます。

年間運用におけるパルス調査と年次調査の組み合わせ

サーベイを効果的に運用するには、調査の頻度と粒度をバランスよく設計する必要があります。従業員の意識や状態は時間の経過とともに変化するため、年に一度の詳細調査だけではタイムリーな変化を捉えきれません。一方で、過度に頻繁な調査は負担感を高めてしまいます。

そこで有効なのが、年次調査とパルス調査の組み合わせです。年次調査では組織全体の構造的な課題や長期的傾向を深掘りし、月次や四半期ごとのパルス調査では短期的な変化を可視化します。両者を組み合わせることで、従業員の声を継続的に収集しつつ、過剰な疲弊を避けながら安定的なモニタリング体制を築くことができます。

打ち手につなげるための分析プロセス

調査を実施するだけでは意味を成さず、その後の分析が施策の質を左右します。結果を部門別、職種別、地域別といった切り口で分解すれば、どの集団にどのような課題が集中しているのかを特定できます。また、自由記述欄に寄せられた声をテキストマイニングなどで解析すると、数値データだけでは見えてこない潜在的な問題や現場感覚を抽出できます。

さらに、エンゲージメントスコアと業績データを相関分析することで、組織にとって改善効果が大きい領域を優先的に見極めることが可能になります。このように分析を打ち手に直結させる工夫が、実効性あるエンゲージメント施策を設計するための鍵となります。

ガバナンスと既存制度への統合

調査と分析を経て導き出された施策を単発的に終わらせないためには、既存の人事制度や組織運営の仕組みに埋め込む工夫が欠かせません。サーベイの結果を評価制度や育成プログラム、配置や異動の設計といった領域に反映することで、調査が一過性のイベントではなく、戦略的な人材マネジメントの一部として定着します。

さらに、経営層が結果を踏まえて明確なメッセージを発信し、現場のマネジャーが日常のマネジメントに活用する流れを確立すれば、組織全体がエンゲージメントを高める方向に動き出します。サーベイを起点にしたPDCAサイクルを確立することこそが、持続的な組織力強化の土台となるのです。

データ活用とツール選定

エンゲージメント向上の取り組みを組織的に推進するには、サーベイを実施するだけでは不十分です。収集した結果を適切にデータ化し、可視化したうえで具体的な改善施策に結びつける仕組みが必要になります。その際には、人事データベースの整備や分析ツールの導入、さらにはワークフロー管理までを視野に入れた全体設計が欠かせません。

データ活用の仕組みを整えることで、施策が属人的に終わらず、組織全体で持続的に改善を続けられる基盤が築かれます。

要件整理:測定からアクションへの流れ

最初に整理すべきは「測定」「可視化」「アクション」という三つの流れです。サーベイを通じて従業員のエンゲージメントを測定し、そのデータを人事DBやBIツールに統合することで、部門ごとの課題や強みを見える化できます。

そこから得られた示唆をもとに、改善施策を具体的なアクションプランとして設計し、実行に移すことが重要です。測定と可視化で終わらせず、必ずアクションにつなげる仕組みを整えることで、エンゲージメント改善のサイクルが組織に根づきます。

ツール選定のポイントと主なタイプ

こうした仕組みを支えるツールにはさまざまなタイプが存在します。サーベイSaaSは短期間で導入でき、リアルタイムに従業員の声を収集できるため、変化の兆しをいち早く把握するのに有効です。タレントマネジメントシステムは、人事評価やスキルデータと連動させられるため、配置や育成施策と直結させやすい特長があります。

さらにBIツールを活用すれば、経営層が全社の傾向を横断的に分析でき、戦略的な意思決定に役立ちます。加えて、ピアボーナスのような仕組みを導入すると、従業員同士の承認や感謝の文化が広がり、日常的なエンゲージメントの底上げにつながります。

導入のステップと留意点

ツール導入を進める際は、一度に大規模に展開するのではなく、PoC(概念実証)で小さく始め、効果を検証しながら段階的に拡大するのが現実的です。導入後は、利用ルールや運用サポートを社内で整備し、定着を支援することが必要になります。

特に注意すべき点は、個人情報保護と匿名性の担保です。匿名性が不十分な状態では、従業員が率直な意見を出せず、データの信頼性が損なわれる恐れがあります。逆に、安心して声を届けられる仕組みを整えれば、サーベイは従業員にとっても組織にとっても有効な対話の場となり、信頼を基盤とした改善のサイクルを持続的に回すことができます。

事例で学ぶ人的資本経営×エンゲージメント

エンゲージメントを高める施策は、理論だけではなく実際の事例から学ぶことで具体性が増し、自社の取り組みに応用しやすくなります。とくに上場企業が開示している情報や業界別の実践例、さらに外部調査機関が示すベンチマークは有効な参考材料となります。

他社がどのように人的資本経営を実践し、エンゲージメント向上を経営成果へ結びつけているのかを知ることは、自社に合った施策を設計するうえで重要なヒントとなります。

上場企業の実践から学ぶポイント

有価証券報告書や統合報告書には、多くの企業がエンゲージメントに関する施策や指標を開示しています。製造業の企業では、安全性や品質管理といった現場の取り組みをエンゲージメント指標と結びつけることで、従業員満足度と生産性の両立を示しています。

一方、IT企業では、リモートワーク制度やタウンホールミーティングといった柔軟な働き方やコミュニケーション施策を「働きがい」の要素として数値化し、開示資料に盛り込んでいます。これらを参照する際は「どの指標を使い、どの施策と関連付けているか」に注目すると、自社で取り入れやすいポイントが見えてきます。公開事例は、施策の効果や実践のプロセスを具体的に理解するための格好の教材となります。

業界ごとに異なるエンゲージメントの焦点

エンゲージメント施策は業界によって重点領域が大きく異なります。製造業では技能伝承や現場の裁量拡大が従業員の意欲を高める効果を持ちます。

熟練者の知識を体系化し、若手が学びやすい環境を整えることが、エンゲージメント向上だけでなく企業の競争力維持にも直結します。IT業界ではプロジェクト型の働き方が中心となるため、オンラインでのコミュニケーションやナレッジ共有を強化する施策が有効です。サービス業では顧客接点が多いことから、従業員体験と顧客体験を連動させる仕組みが成果に直結します。

例えば接客体験の質を従業員満足と一体で改善する取り組みが、顧客ロイヤルティの向上にもつながります。こうした業界特性に即した施策は、汎用的な取り組みよりも効果が高く、持続的なエンゲージメント向上を実現します。

外部ベンチマークを活用した比較と改善

自社の取り組みを評価するうえでは、外部ベンチマークを活用することが欠かせません。代表的なものに「Great Place to Work(GPTW)」のランキングや、各種調査会社が公表するエンゲージメント関連のレポートがあります。こうしたデータと自社サーベイの結果を照らし合わせれば、同業他社と比較した際の自社の位置づけを明確に把握できます。

さらに、外部調査で高評価を得た企業がどのような要素で評価されているかを分析することで、自社施策の改善ポイントが浮き彫りになります。ベンチマークを取り入れることで、自社の取り組みを内向きに終わらせず、客観的な評価軸を持ちながら継続的な改善を進めることが可能になります。

成果の見せ方とロードマップ

エンゲージメントの取り組みは、実行して終わりではなく、その成果をどのように社内外へ伝えるかによって評価が大きく左右されます。従業員のモチベーション向上や組織風土の改善といった抽象的な効果だけでは、経営層や株主に十分な説得力を持ちません。

だからこそ、定量的な指標と具体的な改善プロセスを組み合わせて成果を提示することが重要です。成果を経営課題や企業価値の向上と直結させる形で整理できれば、人的資本経営としての取り組みは戦略的施策として認知されやすくなります。

経営に効く指標設計(KGI/KPI/KSF)

エンゲージメントの成果を示す際には、財務と非財務の両面を意識した指標設計が効果を発揮します。たとえば「離職率の改善によって削減された採用・研修コスト」や「エンゲージメントスコアの上昇と売上成長率との相関」といった橋渡し指標を定義すれば、エンゲージメントが経営成果に与える影響を明確に説明できます。

最終的なゴールとなるKGIに企業価値や収益性を設定し、それを実現するための中間指標としてKPIを置き、さらに施策の成否を左右する重要成功要因(KSF)を整理すると、全体像が体系的に見えるようになります。このような構造化された指標設計は、経営層にとって納得感の高い説明につながります。

初期90日プランと四半期レビューの進め方

施策を実効性あるものにするには、短期的なサイクルで成果を可視化する仕組みが欠かせません。特に初期の90日間は「測定 → 可視化 → 施策実行 → 効果検証」という流れを一巡させることが効果的です。この短期的な成功体験が、関係者のコミットメントを高め、改善活動の定着につながります。

その後は四半期ごとにレビューを行い、進捗や成果を経営層と現場にフィードバックするサイクルを築きます。このプロセスを継続することで、短期的には改善の手応えを確認でき、中長期的には組織文化としてエンゲージメント施策を根づかせることが可能になります。

リスクと限界を踏まえた運用上の工夫

ただし、エンゲージメント施策には注意すべきリスクや限界も存在します。数値だけに依存すると、実態を反映しない「バニティ指標」に偏ってしまい、本質的な課題解決が置き去りにされる危険があります。また、頻繁なサーベイ実施は従業員に負担を与え、回答精度の低下や「サーベイ疲れ」を招く可能性も否定できません。

こうしたリスクを避けるためには、定量指標と質的評価を組み合わせることや、調査設計を工夫してメリハリを持たせることが求められます。信頼性の高いデータを確保しつつ、従業員の声を長期的に引き出し続ける仕組みを整えることが、成果を持続的に積み上げる前提条件となります。

まとめ

人的資本経営とエンゲージメントは、調査や数値化にとどまらず、実際の施策に結びつけてこそ効果を発揮します。年次調査とパルス調査を組み合わせて変化を捉え、データを人事制度や育成・配置に反映させることで、改善のサイクルを組織に根づかせることができます。

さらに、外部ベンチマークやKGI・KPIを用いて財務成果との関係を示せば、経営層にとっても納得感のある取り組みになります。短期的には90日間の改善サイクルを回し、四半期ごとにレビューを重ねることで、成果を積み上げながら中長期の文化変革へとつなげられます。従業員が誇りを持って働ける環境を整えることが、最終的に企業価値の持続的な成長につながるのです。

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