テレワークの普及や多拠点展開が進む中で、「社内の情報が届かない」「経営の想いが社員に伝わらない」といった課題を抱える企業が増えています。こうした課題を解決する鍵として、いま注目を集めているのが“社内広報ツール”です。従来のイントラネットやメールとは異なり、リアルタイムな情報発信や双方向のコミュニケーションを可能にする最新ツールは、情報の届け方を根本から変えつつあります。

本記事では、社内広報ツールの基本から導入メリット、目的別の選び方、そしておすすめのツール5選までを徹底解説。これから導入を検討している企業の担当者はもちろん、すでに導入済みの企業にとっても運用改善のヒントが詰まった内容です。

社内広報ツールとは

社内広報ツールとは、企業が従業員に向けて経営情報や制度変更、福利厚生などの重要情報を迅速かつ的確に伝えるために使用するITツールです。目的は単なる情報伝達にとどまらず、社員のエンゲージメントを高め、組織文化の浸透や部門間の連携を強化することにもあります。

従来はイントラネットや社内メールが主な手段でしたが、それらは一方通行的で閲覧状況の把握が困難であり、情報の鮮度や到達率にも課題がありました。特に多拠点・多職種で構成される企業では、部署や勤務形態によって情報格差が生じやすく、結果として現場と経営層の温度差が拡大してしまうケースも少なくありませんでした。

これに対し、近年の社内広報ツールは、スマートフォンやタブレットなどモバイル端末にも対応し、プッシュ通知や閲覧分析機能、動画配信や双方向コミュニケーション機能などを備えることで、情報の「伝わりやすさ」と「届きやすさ」を飛躍的に高めています。加えて、コンテンツのパーソナライズ配信やアンケート機能を活用することで、従業員の声を吸い上げるインターナルマーケティング施策としての側面も強まりつつあります。

つまり社内広報ツールは、情報共有の枠を超え、企業文化の醸成や戦略浸透を支える戦略的なコミュニケーション基盤へと進化しているのです。

関連記事：社内ポータルサイトおすすめ比較14選！メリット・デメリットから活用事例まで徹底解説

社内広報ツールを導入するメリット

情報伝達のスピードと確実性が向上する

社内広報ツールを導入する最大のメリットのひとつが、情報伝達のスピードと精度の向上です。従来のメールや掲示板では、読まれない・気づかれないリスクが常に伴っていました。

しかし、最新の社内広報ツールは、プッシュ通知機能や既読確認機能を備えており、重要な情報をタイムリーに、そして確実に社員に届けることができます。特に制度変更や緊急連絡など即時性が求められる情報において、その効果は非常に大きいといえます。

経営メッセージが現場に届きやすくなる

経営層のビジョンや中長期戦略、社内制度に込めた意図などを、全社員に浸透させることは多くの企業にとって課題となっています。社内広報ツールを活用すれば、動画やコラム、ライブ配信など多様なコンテンツ形式でトップのメッセージを発信できるため、形式的な通達ではなく「伝わる」コミュニケーションが可能になります。メッセージの受け手である社員側も、自分のペースで視聴・閲覧できるため、理解と共感が促進され、結果として現場との一体感が高まります。

若手・リモート社員との情報格差を解消できる

新卒・若手社員やリモート勤務の社員は、対面での情報共有機会が少ないことから、組織内での孤立感や情報の取りこぼしが発生しやすい傾向にあります。社内広報ツールは、場所や時間に関係なく均等に情報へアクセスできる環境を提供し、こうした格差を最小限に抑える役割を果たします。また、SNS的なUIを備えたツールであれば、若手世代にもなじみやすく、情報受信に対する抵抗感を軽減する効果も期待できます。社員一人ひとりが自分ごととして情報を受け取り、企業とのつながりを実感できる環境づくりに貢献します。

社内広報ツールの主な機能

社内広報ツールは、単なる情報の送受信にとどまらず、組織内のコミュニケーションを活性化し、従業員のエンゲージメント向上を支える多機能なプラットフォームです。

特に、全国に拠点を持つ企業やリモートワークを導入する組織においては、情報伝達の効率化と公平性の確保が重要な課題となっており、それを解決する手段として注目されています。

以下に、代表的な社内広報ツールの主な機能を一覧にまとめました。

社内広報ツールの選び方

社内広報ツールを導入する際には、「何を目的として導入するのか」を明確にし、その目的に合った機能や設計を備えたツールを選ぶことが重要です。市場にはエンゲージメント向上に特化したものや、シンプルな情報配信に強みを持つツールなど、さまざまな特徴を持つ製品が存在します。

以下では、選定時に特に重視すべき3つの観点について解説します。

1. 導入目的を明確にする

社内広報ツールを選ぶ際の第一歩は、自社にとっての導入目的をはっきりさせることです。経営層のメッセージを浸透させたいのか、部門間の情報共有を円滑にしたいのか、それとも社員エンゲージメントの向上を図りたいのか。目的によって必要とされる機能や導入後の運用スタイルは大きく異なります。たとえば、社内文化の醸成を重視するなら、動画配信やリアクション機能のあるツールが適しています。

一方、情報のスピーディな共有が主目的であれば、配信スケジュール管理やセグメント配信に優れたツールが望ましいでしょう。目的と手段が一致していないと、ツールが形骸化してしまうリスクがあります。

2. 操作性・UI/UXを重視する

どれほど機能が豊富でも、社員が使いこなせなければツールの価値は半減します。特に、年齢層やITリテラシーの幅が広い企業においては、直感的な操作性と見やすいデザインが極めて重要です。スマートフォンやタブレットでも快適に使えるか、多言語対応があるかなども確認しておくべきポイントです。

また、導入初期のトレーニングが最小限で済むようなUI設計であれば、現場での受け入れもスムーズになります。誰もがストレスなく使える環境を整えることが、定着と活用の鍵を握ります。

3. サポート体制や拡張性を確認する

ツールは導入して終わりではなく、運用フェーズでの改善やアップデートが必須です。そのため、ベンダーのサポート体制が充実しているか、導入後に機能の拡張やカスタマイズが可能かどうかも重要な選定基準となります。

たとえば、新しい部署が増えた際の設定変更や、利用状況の分析レポート作成機能など、成長に応じて対応できる柔軟性は長期運用の上で欠かせません。また、セキュリティ面の信頼性や、他の社内システムとの連携性も見落とせないチェックポイントです。

‍

社内広報ツールおすすめ比較5選

​社内広報ツールは、組織内の情報共有やコミュニケーションを円滑にするための重要なツールです。​以下に、特に評価の高い5つの社内広報ツールを紹介します。​

1. LumApps（ルムアップス）

LumAppsは、Google WorkspaceやMicrosoft 365と連携可能な社内ポータルサイト作成ツールです。​特別なITスキルを必要とせず、直感的な操作でポータルサイトを構築できます。

​これにより、広報や総務、経営戦略部門など、社内の様々な人がポータルサイトの運営に関わることが可能です。​また、モバイル対応やSNS機能も備えており、従業員間のコミュニケーションを活性化させることができます。 ​

2. ourly（アワリー）

ourlyは、組織改善に特化したWeb社内報サービスです。​独自の分析機能により、社内コミュニケーションの活性化やエンゲージメントの向上、経営理念の浸透など、幅広い組織課題にアプローチします。​

アプリで記事の閲覧や投稿が可能で、段落ごとのリアクション機能やコメント機能を通じて、双方向のコミュニケーションを実現します。​また、専門コンサルティングチームによる伴走支援体制も整っており、導入から運用まで手厚いサポートが受けられます。

3. TUNAG（ツナグ）

TUNAGは、社内報機能だけでなく、チャット機能やカレンダー機能、申請機能など、業務効率化に寄与する機能が充実しています。​

これにより、業務全般のDX化を一つのツールで一気に進めたい企業におすすめです。​また、社内ポータルや社内wikiなどのツールを通じて、業務の効率化や情報の迅速な共有が可能となります。

4. NotePM（ノートピーエム）

NotePMは、マニュアルやWeb社内報の作成、ナレッジ共有など、社内における情報発信やコミュニケーションを効率化できるツールです。

​グラフや写真を埋め込める文書機能や掲示板機能、コメント・リアクション機能、お知らせ通知機能など、多彩な機能を備えています。​これにより、情報の蓄積と参照を活性化させる効果が期待されます。

5. 社内報アプリ（ウィズワークス株式会社）

ウィズワークス株式会社が提供する社内報アプリは、PC・スマホ・タブレットに対応したマルチデバイス閲覧機能を備えています。

​社員参加型の情報発信を実現し、未読一覧や効果測定機能を活用することで、情報伝達の確実性と改善を支援します。​これにより、社内情報の共有と社員間のエンゲージメントを高めたい企業に最適なツールです。

社内広報ツール導入時の注意点

社内広報ツールは、情報共有や従業員エンゲージメントを高める強力な手段となりますが、導入時にはいくつかの重要な注意点があります。ツールの導入が目的化してしまったり、現場で使われなくなったりすることを防ぐためにも、以下のポイントを事前にしっかりと整理しておくことが不可欠です。

セキュリティ対策を徹底する

社内広報ツールは、社内の経営戦略や人事情報など機密性の高いデータを扱うケースが多いため、セキュリティ対策は最優先で検討すべき項目です。具体的には、データ暗号化、アクセス権限の設定、多要素認証（MFA）の有無などが重要な評価基準になります。

また、クラウド型サービスを導入する場合は、ベンダー側のセキュリティ体制や外部認証（ISO 27001など）の取得状況も確認しておくべきです。万が一の情報漏えいリスクを最小限に抑える体制を整えることが、導入成功の前提となります。

運用ルールとコンテンツ設計を事前に固めておく

ツールを導入しても、誰が何を、どの頻度で発信するかが明確でなければ、情報の偏りや空白期間が発生し、従業員の利用率は下がってしまいます。導入前には、「どの部署が主導するか」「情報発信の責任者は誰か」「発信コンテンツの基準は何か」といった運用ルールを明文化しておくことが不可欠です。

また、読まれる社内広報を継続するには、読みやすさや更新頻度、デザイン性にも配慮したコンテンツ設計が求められます。必要に応じて、社内ライターや広報担当者をアサインする体制も考えておくとよいでしょう。

情報発信の負担を軽減する仕組みを構築する

社内広報を継続的に行う上で大きな課題となるのが「担当者の発信負担」です。特に人数の少ない部署では、通常業務と並行して広報業務を担うことになり、無理が生じがちです。これを避けるためには、テンプレート機能の活用や投稿スケジュールの自動化、他部署からの情報提供体制の整備など、発信の効率化を意識した運用設計が必要です。

また、社員参加型のコンテンツ（写真投稿やインタビューなど）を取り入れることで、発信側の負担を軽減しつつ、双方向性の高い広報活動を実現できます。

関連記事：コラボレーションツールとは？導入背景・選び方・成功事例まで徹底解説！

まとめ：社内広報ツールは「情報共有」と「組織力強化」の要

社内広報ツールは、単なる情報伝達の手段ではなく、経営方針の浸透、従業員エンゲージメントの向上、組織の一体感醸成など、企業活動の根幹に関わる役割を担います。従来のイントラネットやメールと違い、プッシュ通知・動画配信・コメント機能などを通じて「伝える」だけでなく「伝わる」広報が可能になりました。

ツール選定では、自社の目的や組織構造に合った機能性と操作性を見極めることが欠かせません。加えて、情報セキュリティや運用体制、継続的な情報発信のための仕組みづくりも、導入成功のカギとなります。

‍