KPPグループホールディングス株式会社
M&Aで49カ国へ拡大。KPPグループがLumAppsで実現した「文化をつなぐ」社内コミュニケーション
KPPグループホールディングス株式会社
1924年に大阪で創業し、日本の紙・板紙流通を牽引してきたKPPグループホールディングス。同社は、紙商社として国内トップの事業規模を誇る。近年はグラフィック用紙の需要減少を見据え、パッケージング事業やビジュアルコミュニケーション事業への多角化を推進。その原動力となっているのが、積極的な海外M&A。2019年に豪州の大手紙商Spicersを、2020年にはフランスの紙卸売会社Antalisを買収。これにより海外拠点が爆発的に増え、現在では49カ国・地域、203都市に事業拠点を構えている。
従業員数
6000
事業内容
紙・パルプ分野の専門商社
業種
卸売・小売・商社
導入の背景
PDF社内報の限界──100周年を機に交わった広報とITの思惑
事業のグローバル化が急速に進み、従業員数も一気に増加するなか、社内コミュニケーションには課題が生じていた。
グループ全体で情報を共有する仕組み自体は存在していたものの、シングルサインオン(SSO)には対応しておらず、アクセスには個別のユーザー登録が必要だった。そのため、利用できるのは一部の従業員に限られていた。さらに、拠点ごとに利用するシステムやコミュニケーションのスタイルが異なり、各グループ会社もそれぞれ独自のイントラネットを運用していた。「こうした環境では、せっかくある拠点で良い取り組みが生まれても、それをグループ全体に共有し、ベストプラクティスとして横展開していくのが難しかった」と藤戸氏は説明する。
広報部門としても、社内情報の発信手段に限界を感じていたという。同社では、海外子会社との相互理解を目的として、2021年から日本語と英語のPDFによるグループ報を3カ月に1回発行していた。しかし、その運用は各社の担当者から原稿と写真を取り寄せ、CC室がデザインソフトでページを組み、翻訳するという膨大な手間がかかるものだった。各社のイントラネットに掲載してもらっても閲覧状況は把握できず、即時性もない。金氏は「SNSのように、日々の出来事をもっと自由に発信できるWeb化ができないかと模索していました」と当時の苦労を振り返る。
転機となったのは、2024年に迎えた創立100周年だった。グループ全体のインフラ整備という観点から、共通のデジタルワークプレイスの必要性を経営層に訴えかけていたIT部門の構想と、グループの一体感醸成を目指す広報部門の思いが合致。両部門の連携のもと、新たなグループポータル構築プロジェクトが始動した。

選定理由
多言語・多拠点の壁を越える、共通のコミュニケーション基盤へ
複数社のツールを比較検討した結果、同社が選定したのがLumAppsだった。選定にあたって重視したのは、SSOへの対応と、社内基盤として利用するMicrosoft 365との親和性だ。さらに、今後のM&Aを見据え、新たな企業がKPPグループに加わった際にもスムーズに利用を開始できる柔軟性も求められた。
「これらの条件を総合的に見たとき、LumAppsに優位性があると判断しました。加えて、導入・運用を支援するリセラーのサポートが非常に丁寧だったことも大きかったですね」(藤戸氏)
広報部門が特に注目したのは、多言語対応と双方向のコミュニケーション機能だった。LumAppsには100以上の言語に対応する自動翻訳機能があり、各国の従業員が母国語で情報を受け取れる。特に、欧州と南米を中心に30カ国以上の拠点を管轄するAntalisでは、それまで情報を各国の言語へ翻訳する作業が大きな負担となっていた。
「多言語対応は、まさに欲しかった機能でした。Antalisの担当者からも、伝えるべき情報をすべて現地語に訳すのに苦労していると聞いていましたから」(金氏)
また、記事への「いいね」やコメントを通じて、従業員がリアクションできる点も評価された。金氏は「情報を一方的に届けるだけではなく、反応が返ってくる。グループ内のコミュニケーションを活性化していくうえで、こうした機能は非常に魅力的でした」と語る。
運用・活用
買収した企業のブランドを尊重するからこそ、相互理解の場が必要だった
しかし、ツールが決まっても現場への浸透は一筋縄ではいかない。
同社では、Antalisや200年近い歴史を持つSpicersのブランド価値を尊重し、すべてのグループ会社にKPPの看板を掲げさせるような方針はとっていない。金氏が「『今日からKPPを名乗ってください』というような、KPP色に染めるコミュニケーションはしていません」と強調するとおり、トップダウンでの強引な統制は意図されていなかった。社長自身も、買収先を新たにグループの一員になった仲間として迎え入れ、各社が培ってきた伝統や文化、ブランドを尊重し、その強みを生かした経営を心掛けている。
だからこそ、新たなグループポータルの役割は、上からの統制ではなく、相互理解の場に置かれた。互いの強みを知り合い、良い取り組みを横展開していく。業務に必須ではなくとも、あると良いものをいかに根づかせるかが次なる課題となった。
「グループ全体のポータルを作るからといって、決して各社既存のポータルを捨てるわけではありません。『なぜホールディングスのための新しいポータルが必要なのか』という点について、現場とのあいだで意識のすり合わせを行う必要がありました」(金氏)
Active Directory統合の壁を越えた先にある、LumAppsがハブになる未来
インフラ構築で大きな課題となったのは、M&Aによって加わった各社で異なるActive Directory(AD)の運用ルールの統合だった。ライセンス付与や組織情報の整理には地道な調整が必要だったという。
「ライセンス付与のルールや表示情報をどう統一するか。特効薬はなく、1つずつ設定を調整していきました」(藤戸氏)
一方で藤戸氏は、こうした複雑な環境だからこそLumAppsの柔軟性が生きると話す。新たに買収した企業のIT環境がGoogle WorkspaceなどMicrosoft 365以外であったとしても、LumAppsであればシームレスに統合し、情報共有基盤に引き込めるためだ。「新しい仲間を早く迎え入れるという意味で、非常にやりやすいツールだと考えています」と期待を寄せる。
「mille-feuille(ミルフィーユ)」に込めた思いと運用の工夫
数々のハードルを越え、2024年7月、グループポータルサイト「mille-feuille(ミルフィーユ)」が公開された。名称は、フランス語の「千(mille)」と「葉(feuille)」に由来する。若手社員の提案から採用されたこの名前には、「紙を扱う商社らしく、社員一人ひとりの思いやアイデアが層のように積み重なり、新しい価値を生み出してほしい」という願いが込められている。
公開後、同年11月27日の創立100周年に向けたカウントダウン企画でmille-feuilleは本格稼働。100日前から毎日、世界中の拠点の社員が数字とともに写る写真をトップページに掲載し、全社でお祭りのような一体感を生み出した。
“お祭り”の後もmille-feuilleを持続させるため、CC室は各社に無理なく発信を続けてもらう仕組みを構築した。現在はホールディングスが情報を集約するのではなく、グループ各社が自ら発信者となっている。職場・社員紹介といった定番コンテンツは、偏りが出ないよう持ち回りの投稿スケジュールカレンダーを作成し、海外の長期休暇の時期は休みにするなど各国の事情も汲みながら運用している。「以前デザインソフトを使って制作に充てていた膨大な時間が、運用管理へと置き換わり、時間短縮された感覚です」と金氏は語る。

導入の効果
自動翻訳と「いいね」が生み出す、国境を越えたコミュニケーション
ポータルの定着に向けた努力は着実に実を結び始めている。定量面では、コンテンツの定期更新が功を奏し、記事へのリアクションやコメント数は2024年の公開直後に比べて約2倍に増加した。
また、複数の言語を理解する社長が自ら記事の翻訳精度を確かめ、「インドネシア語も自然に訳せている」と驚いたというエピソードもある。誰もが母国語で読める環境が、情報取得のハードルを大きく下げているのだ。
「いいね」やコメント機能も、心理的な距離を縮める役割を果たしている。
「印象的だったのは、スペインの女性社員のキャリアを紹介した記事に、日本のホールディングス会長が自らポジティブなコメントを書き込んだことです。本人から『光栄です』と返信があり、ポータルがなければ交わることのなかったトップと海外の現場社員が直接コミュニケーションを取る機会が生まれました。こうしたやり取りは、社員のモチベーションアップに間違いなくつながっています」(金氏)
「あると良い」から「なくてはならない」ビジネスシナジーの創出へ
コミュニケーションの活性化と一体感の醸成という第1フェーズを順調に進めているKPPグループ。今後は、ポータルサイトの役割をさらに発展させていく構想を描いている。
金氏は「今後はコミュニケーションツールの役割に加えて営業に直結する現場のナレッジや、顧客への提案事例などの『ビジネス情報共有プラットフォーム』にもなる様に進化させていきたいと考えています。グループ横断でのベストプラクティスの共有が、新たな売上機会の創出やビジネスシナジーを生むきっかけになれば」と展望する。
また藤戸氏も「一部の人は、まだアクセスしなくても仕事は進むかもしれません。ただ、必要に迫られてアクセスした先に役に立つ情報がある、と気づいてもらえればいい。ビジネスデータを共有したいという現場のニーズにも応え、『あると良い』から『なくてはならない』プラットフォームへと一段引き上げていきたい」と力を込める。
国内でも新たにビジュアルコミュニケーション事業の会社が加わるなど、グループの仲間は広がり続けている。買収先の個性を尊重し、強引な統合はしない。それでも、重なり合った層は確実にひとつの「ミルフィーユ」を形作っている。国境を越えて愛される菓子のように、デジタルを起点として人と人とをつなぐKPPグループの挑戦は続いていく。

数値で見る導入成果
100以上
自動翻訳言語数
約2倍
記事へのリアクション数
藤戸 肇 氏 様
金 政美 氏 様